相手は札幌から羽幌に向かっていたらしい工事責任者らしき47歳男性
車から降りてきての第一声は『やっちゃった～』である
そしてあろう事か、第二声は俺の方をチラッと見ながら『やっちゃいましたね』である
おいおい、『やっちゃいましたね』じゃねぇだろ
どのツラぶっ下げて同意を求めて来てんだよ
どう考えても…スリップが原因だとしてもお前の一時不停止が原因だろが
口を思いっ切りつねってやりたい衝動を押さえるのに大変だったわ
こう思ったね
『ははん、もう過失割合の駆け引きが始まってる訳ね』とさ
程なく相手が会社に連絡を取り始めた
と、『すいません、またやっちゃいました』なんて驚きのカミングアウト
ぶつけた車を見ると、今回の衝突とは逆側のフェンダーが結構な勢いで引っ込んでいる…常習犯じゃん、こいつ
『事故プロ…こりゃ手強いぞ』と緊張感が増す
互いの身分照会に名刺交換をし、幌糠交番へ処置をお願いする
交番内での聴取が始まる
大まかな説明は相手方がしていた
その説明の所々に『俺だけが悪い訳じゃない、不可抗力だ』的な説明を織り込んでくる相手
流石常習犯だな、口調に抜かりがない
に対し、駐在さんが俺に『そうなんですか？』的な同意を求めてくるが、俺はガンとして俺の意見を主張する
声のトーンはいつもより1オクターブ低く、必要最小限の言葉数にて…
椅子の前側半分にだけ腰掛け身を乗り出して説明する相手に対し、俺は深く腰掛け背もたれに背を付け腕組み状態だ
眉間にシワを寄せ口元は少しだけ捻ってみた…まるで映画クローズに出てくるその他大勢の不良のひとりの如く
なんせ『ははん、もう駆け引きが始まってる訳ね』だからな
威圧感と激怒感を醸し出そうと俺も必死だわい
と言うか、絶対的な『俺は悪くねぇ』自信があったからさ
根拠ある自信に勝るものなし！だよ
結局薬局…
諸手続きを済ませて三者解散
クローズ顔が功を奏したが否かは解らんが、互いの言い分の殆どは俺の意とする辺りでまとまったので納得
仏顔に戻る俺
後は保険屋さん同志の話し合いにって事となった
そそくさと去り行こうとする相手に『峠、ずうっとアイスバーンだから気を付けた方がいいっすよ』との声掛けも忘れない
なんて優しいんだ、俺
先ほどまで死闘を繰り広げていても、試合が終わればノーサイド
フェアプレイ精神がモットーのまるでWBC台湾チームのような立ち振る舞い
バ韓国のマウンド旗立てのような敵の傷に博多の塩を擦り付ける様な愚行はしない
が、取り様によっては皮肉にも聞こえるがな…

当日夕方、ウチの保険屋さんから連絡があった
『交差点内の事故なので10:0は無理かと…最悪8:2位になるかも知れない』って事だった
まぁ、仕方ないっすよねと答えておいた
それくらいは想定済みだったしね
にしてもさ
保険屋さんのお世話になるような衝突事故に限れば多分19年振り
前回の時も相手方の一時不停止が原因だった
ぶつけられたところで新品になるもんじゃない
次年度の保険等級が引き上げられるので全く以って得はない
馬鹿臭いよね、事故ってさ(；´д`)
第二声で放たれた『やっちゃいましたね』を思い出し、怒りが再燃する朝である

18歳未満入場不可

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